――お二人はどんなきっかけで出会われたんですか?
宮原もともとお互いの奥さん同士が知り合いだったんだよね。それがきっかけで、ウチでよくやってたホームパーティに顔を出してくれたのが、最初かな。
釜萢もう7年くらい前だね。
宮原彼がグリーンルームフェスのオーガナイザーだっていうのは知ってたけど、話をしたのはそれが初めてだったね。
――グリーンルームフェスには毎回素晴らしいミュージシャンが参加してますが、今年のラインナップも良かったですね。
釜萢特に今年は最高でした。Tom MischやLeon Bridges、大好きなアーティストがついに出演してくれたって感じで。
――そもそもグリーンルームフェスを立ち上げたのは、どんな経緯だったのでしょうか?
釜萢ロサンゼルスとサンディエゴのちょうど真ん中ぐらいにラグーナビーチってあって。2004年にそこで行われたムーンシャインフェスティバルっていうイベントを見に行ってすごく感銘を受けたんです。それで主催者にこれを日本に持っていきたいって話をしたんですが、結局ムーンシャインは資金難でそれきりなくなってしまいました。僕の方はもう火がついていたので、グリーンルームフェスって名前で2005年にフェスを立ち上げました。
宮原グリーンルームフェスの初期の頃って、僕の周りじゃこれって何のイベント?みたいな反応だった(笑)それが今じゃ都市部でやるフジロックみたくメジャーな存在になってるよね。
――ひとつのカルチャーを背景に、音楽だけでなく様々な分野のアーティストが参加するというのが、ほかの野外フェスと大きく違うところですが、意識的にそうなったのでしょうか?
釜萢やっぱりカルチャーとしての匂いみたいなものは常に大切にしてますね。音楽だけじゃなくて、アートやフィルム、フードも含めないと、その匂いって出てこないと考えていて。
宮原ライブ会場として有料のステージが二つあって、その外側の無料エリアにアートや映画が上映されてる感じだよね。そこにいろんな人が集まってコミュニティをつくってて、すごく開かれてる雰囲気がある。
釜萢無料エリアも手を抜いてないからね。収支で言えばコストでしかないわけだけど、その無駄な部分が一番大事だと思ってる。やっぱりサーフィンにしても、ビーチにしてもそもそもが自由というかオープンなものだから。
宮原まさに青島ビーチパークも花火やシネマ、DJだったりいろんなイベントが無料で…まあ有料にしようにも物理的に管理できるものじゃないんだけど(笑)でも、開かれてるからこそのビーチだったりするんだよね。グリーンルームフェスと青島ビーチパークは全然違うものだけど、そういう根本的なところでシンパシーを感じてる。
――グリーンルームフェスと青島ビーチパークとでは、やはり開催される期間が違いますよね。
釜萢青島ビーチパークは、ひと夏を通しでやれるっていうのが最高ですよね。やっぱりフェスってどんなにクリエイティブなものを考えて作ったとしても次の日には撤去されるものなので。それを常に置いておくことが出来て、付け加えていきながら何かを生み出すことができるってすごく羨ましい。フェスの刹那的なものとはたぶん真逆のところだよね。
宮原青島ビーチパークは4月末から9月末まで、毎日毎日のなかで積み重ねていくものだからね。それって暮らしや日常をどう創っていくかってことだって考えてる。でも青島ビーチパークはまだ5年、グリーンルームフェスなんて15年間もやってる。継続させていくことでしか見えないものってあるんじゃないかな。
――そのあたりは釜萢さん、いかがでしょうか?
釜萢結局のところ1年1年の積み重ねで15年やって来られたな、っていうのが正直なところで。9年目まではすごく赤字が続いて、10年目で初めてビジネスとしての成功あったのかな。とにかくフェスを創るってこと自体に魅せられてたし、毎年もっと良いものにしたいって思ってた。
宮原成功するまで10年続けるってすごいよね。普通やめちゃうよね(笑)
釜萢もちろん赤字はイヤなんだけど、それよりももっとお客さんを喜ばせたりとか、もっと格好良いものを創ったりとかっていうことにどんどんのめり込んでいったんだよね。フェスを始めてから、それを継続させるためのビジネスやプラットフォームを考えるようになったし。もうフェスがビジネスとして成り立つようになって5年以上経ってるから、昔の苦労は笑い話みたいなものだけど。
宮原いま聴いていてなるほどって思ったんだけど、続けていくことでお金に代えられない人的な財産ってあるよね。例えばグリーンルームフェスや青島ビーチパークを続けていることで出会える人たちって、ガツンとノリが合う。そういう人たちと一緒に何かやろうとなると、あっという間に次の展開に転がっていくから。
釜萢そうだね、それは同じだね。
宮原そうやって続けていくと最初に立ち上げた人間、代表者の思いがひとりで進みはじめるタイミングってあるんじゃないかな。いろんな人たちが関わることで、塗り重ねられたり拡大していったりする。そしてそこに集まってくる人たちが、ひとつの風景を描いていく。それは代表者だけでは描けないものだからね。